十二国記と佐藤亜紀とモリミーと

流れに何の関連もないと思いつつ、読んだ作品と作家を無理やり並べてみました。雑感を簡単に書いておきます。 yom yom (ヨムヨム) 2009年 10月号 [雑誌]作者: 出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2009/09/26メディア: 雑誌 yomyomの12号はもちろん十二国記の新作が目的です。 事前に新潮社のサイトで告知があったので、『華胥の幽夢』収録の「帰山」を読んで気分を盛りあげました。 新作は柳国が舞台でタイトルは「落照の獄」 「帰山」で語られた柳国の状況を内側、つまり官吏の視点から描きます。司法がらみでタイムリーな話といえますかね。でもちゃんと「天」につながっていて、十二国記の世界観に組み込まれています。天綱に記された条理は絶対で、そのこと自体は是非もなく容認されていても、やはり人は悩むし揺れるのでありました。 今度はもう少し動きのある話が読みたいなー、と贅沢を言ってみます。というか本編はどうなるの? 激しく、速やかな死作者: 佐藤 亜紀出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2009/06メディア: 単行本 『激しく、速やかな死』佐藤亜紀 短編集です。 うー、これはヨーロッパの歴史と文化の知識がないとつらいです。サド侯爵ならメジャーだし、白檀の小箱の話のように、背景を知らなくても女の人の意地悪な言い回しを楽しめる話もあるんですけどね。 作者による解題がついてますけど、私の力不足ということで…。 これを隅まで理解できる人…

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『遠まわりする雛』米澤穂信

遠まわりする雛米澤 穂信角川書店 2007-10by G-Tools 古典部の面々の一年間を描いた短編集です。 『氷菓』も『愚者のエンドロール』も未読なのに、シリーズの四作目を読んでしまいました。 ミステリーが苦手といいつつ、この人の本を読んでしまうのは、べたべたしていなくて苦味がある青春小説としても楽しめるからなんだろうと思います。 本の中の言葉を借りれば、奉太郎の推理の部分は「そんなん知らんがな」の世界なんですよ、私にとっては。 なんですが、本当の謎は、なぜそうするのか? という人物の心情に繋がっていたりするのですよね。 理屈をこねくり回して、つまらんポリシーに拘泥する奉太郎が、今まで知らなかった感情や、自分を包む、より広い世間を感知して内面に揺さぶりをかけられる。そんなところに微笑せずにはいられないのです。

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『青年のための読書クラブ』桜庭一樹

青年のための読書クラブ桜庭 一樹新潮社 2007-06by G-Tools ミッション系のお嬢様学校、聖マリアナ学園。異形の者が集う読書クラブには、暗黒のクラブ誌がありました。代々の部員によって記録された、学園の正史に残ることのない珍事件の数々とは…。 装丁と内容と文体がぴたりと合って、乙女の秘めた胸のうちと、その不完全さが示す可能性が凝縮され、小さな世界が出来上がっています。 また、クラブ誌を通して描かれるのは、学園の百年にわたる年代記でもあります。五つの事件のなかでは、第二章の聖女マリアナ消失事件がぴかいち。創立者である修道女マリアナのフランス時代に遡るお話です。これですね、設定がベタベタなんですが、不覚にも泣きそうになりました。作者の狙ったところに、胸に的を貼り付けて飛び込んでしまいました。撃たれました。 くるくる回るような語りのなかに存在する乙女たちは、勇ましく、ちょっと哀しく、またふてぶてしくもあり、読みながらにやにやしてしまうのでありました。

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『さよなら妖精』米澤穂信

さよなら妖精 (創元推理文庫)米澤 穂信東京創元社 2006-06-10by G-Tools 地方の高校生たちと、外国からやってきた同世代の少女の出会いと別れを描いた青春ミステリーです。 あえて内容には触れないけれど、語り手の守屋くんは、極めて異質な他者と出会うことで、身近な人や自分をとりまく物事の、そして己のいろんな側面に気づきます。これがねー、痛くて青くて背中がむずむずしました。 「自分探し」の病にかかりかけた守屋くんを生暖かく見守りながら読んでいたわけですが、結末までたどり着くと、苦さ、かっこ悪さ、そこはかとない喪失感が加わって、この物語も登場人物たちも愛すべきものに変わっていたのでした。

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『クドリャフカの順番 「十文字」事件』米澤穂信

クドリャフカの順番―「十文字」事件米澤 穂信角川書店 2005-07by G-Tools お? これはシリーズものだったんですね。面白かったです。古典部シリーズの他の二冊、『氷菓』と『愚者のエンドロール』もそのうち読みます。 特に必要性のないことはやらない、という省エネをモットーとする折木奉太郎、古典部部長の千反田える、福部里志、伊原摩耶花。 神山高校の文化祭が始まりますが、彼ら古典部の面々は手違いで作りすぎた文集の山を前に頭を抱えます。 一方校内では、ガラクタを盗んで犯行声明を残す怪盗事件が発生。奉太郎たちは古典部を宣伝し文集を売るため、事件の謎に挑みます。 文化祭の出し物がえらく充実していて楽しそう。料理バトルなんか最高です。あとは豪農の娘である千反田さんのペースに、妙に引きずられました。 タイトルの意味は何かなーと思いますよね。「身を震わせるほどの切実な期待と失望」を表わしています。 好きなこと、憧れること、やりたいことが、自分の前に明るい可能性として開けている。そう思えたことが失われていく切なさが淡くたちのぼってきて、印象的でありました。

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『雨にもまけず粗茶一服』松村栄子

雨にもまけず粗茶一服松村 栄子マガジンハウス 2004-07-15by G-Tools おー、面白かったです。 主人公は東京にある武道茶道家元の跡継ぎ、友衛遊馬(あすま)十八歳。親の言うままに京都の大学に入り家を継ぐなんてやってられん、俺は自由に生きるんだ、とばかりに家を飛び出します。そのとき由緒ある茶杓を持ち出し、騒動の元になるのです。 遊馬はちょっとした理由があって京都が嫌いなんですけど、成り行きで京都で暮らすことになります。家を出たのも結構成り行きで、場当たりな目標しかなく、跡継ぎという立場から逃げたかったというのが真相です。 そういう風に逃げたのに、どうしてだかその身はお茶に縁のある場所へと流れついてしまうのです。ジタバタする遊馬の駄目っぷり、いやだいやだと思っても、からだには作法がしみ込んでしまっている様子がなんだかおバカさんで、「ふふふ」と笑いがもれてしまいました。 登場人物がなかなか素敵です。持ち寄り茶会を心から楽しむ妙ちくりんな茶人たちや、「お茶というのは人それぞれであり、自分にできるのは精一杯を弟子の前で尽くして見せることだけだ」と思うお茶の先生、志乃。不調法でお茶のことは詳しくわからない私に、その魅力や茶人ひとりひとりの心持ちの一端を垣間見せてくれました。 この他にもドラマがてんこもりで楽しい楽しい。 しかしこの遊馬、小説内でも言われてますけど、一文無しでさすらい、よく知らない家に居候してわりと平気で食事をご馳走になっている様子は、ツワモノといいますか鈍…

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