あけましておめでとうございます

また新しい年がやってまいりました。 今年ももりもりと読書をして、ステキな本にめぐり会いたいものです。 昨年は武田百合子にしびれました。翻訳物や名作もぽつぽつと読んで楽しみましたが、今年もこの傾向は続きそうです。名作って、お宝の山なのですよね。 年末から正月にかけて読んだ本は、 『テンペスト』池上永一 琉球王朝を舞台に、一人の女性が性を偽り宦官として王府に入り出世していくという話です。 うーむ、池上永一なので普通の歴史小説ではないだろうと思ってはいましたが、微妙だなー。薩摩と清国に挟まれた琉球王朝の話はいいとして、ヒロインの話が…。 ヒロインを宦官に仕立て、一人の人物の内面に男性性と女性性を二極化して取り込んでいるとはいえ、弱味を握られるとすぐ泣いて弱腰になるのはどうなのよ。徐丁垓に関しては、おっさん向けのエロ小説なのかと思いました。 話の勢いはありますけど、どうかなあ、ちょっとつらいなあ。 『存在の耐えられない軽さ』ミラン・クンデラ 男と女のごたごたが延々と書いてあるのかと思い引き気味だったのですが、だんだん面白くなります。人生の一回性、人物の行為をめぐる解釈などの様々な論考が積み重なり、溶け合って、もの悲しくも美しいラストを迎えるのでありました。

続きを読む

『風車祭(カジマヤー)』池上永一

風車祭(カジマヤー) (文春文庫)池上 永一文藝春秋 2001-08by G-Tools 沖縄の石垣島を舞台にした物語。 226年間も島を彷徨っているマブイ、ピシャーマに出会い恋をした少年武志。 長生きに執念を燃やし、97歳の生年祝いである風車祭(カジマヤー)を迎えるためには手段を選ばないオバァ、フジ。 しかし彼らの賑やかな日常と、信仰を忘れた島には危機が迫っていた。 うーん、最初に気になった事を書いてしまうと、漫画的なドタバタが過剰で、その部分が読んでいてだれます。八重山諸島の祭祀や言い伝え、民謡をモチーフにした物語なので、それらを一本に繋ぐために武志たちを動かす必要があるんですね。伏線のために突飛なことをさせるのはわかりますけど、狙った笑いや悪乗りの描写がくどく感じてしまいました。 良い所もたくさんありました。 行間から石垣島の光や空気が滲み出ていて、伝承も面白い。なにより読後感がいいです。 福徳のあるチーチーマーチューとターチーマーチューの兄弟や、月夜に曲を奏でて歌う慶田盛のオジィなんかは好きだなあ。 あとは「マブイ」の概念と死生観の考察がよかった。ここに著者の根っこになるものが集約されていて、創作にも影響を与えているのだろうと思います。

続きを読む

『バガージマヌパナス』池上永一

バガージマヌパナス―わが島のはなし (文春文庫)池上 永一文藝春秋 1998-12by G-Tools 沖縄の小島に住む綾乃は19歳。怠け者で飲酒喫煙万引きと素行も悪い。幼い頃から感受性が強かった彼女は、ある日神様からユタ(巫女)になれとお告げを受ける。86歳の親友オバァ、オージャーガンマーも巻き込んで、綾乃がユタになるまでを描く。 沖縄復帰後、観光客や日本(ヤマト)の文化が流入し、南の島ならではの時間の流れや民間信仰が薄れてゆく、という背景があります。しかしその伝統を守るのだ、なんて悲壮感はかけらもありません。島は愛しているけれど、綾乃はユタになんかなりたくなくて、神様の執拗なお告げを適当にかわして、気ままな人生を送りたいわけです。オージャーガンマーとガジュマルの樹の下でユンタク(おしゃべり)したり、一緒にパイナップル泥棒をして過ごしたい。 でもそのままではいられないのですね。 話の運び方に粗もありますが、それをおぎなって余りある魅力が本から溢れています。 綾乃、オージャーガンマー、島一番のユタ・カニメガ(←強そうな名前だ…)たちの笑いを誘う日常。三線と琉球民謡。そして南の島の天と地と海が身体を包み込みます。

続きを読む

もっと見る