『大奥 第五巻』よしながふみ

大奥 第5巻 (ジェッツコミックス)作者: よしなが ふみ出版社/メーカー: 白泉社発売日: 2009/09/29メディア: コミック 綱吉編です。 第四巻で、物憂げな魅力で周囲を惑わす綱吉にわくわくした私でありますが、いい意味で裏切られます。第五巻で見せる、ひとりの生身の人間の顔に泣きたくなりました。 表向きの雰囲気は、世の中が平和になって、元禄文化がはなひらいて、大奥でもギラギラした欲望が交錯して…だけれど、綱吉に限らず玉栄も右衛門佐も皆すこしずつ哀しいのだなあと。 柄on柄という伝兵衛のすごい衣装にすら哀しみをおぼえます。いや、お伝はいいやつです。 読んでいてほんとうに悲しくなってしまっただけに、お信との対面は清々しかったです。綱吉の笑い声も切なさも痛いほどわかります。

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『シュリーマン旅行記 清国・日本』ハインリッヒ・シュリーマン

シュリーマン旅行記清国・日本 (講談社学術文庫 (1325))作者: H.シュリーマン出版社/メーカー: 講談社発売日: 1998/04メディア: 文庫 トロイア遺跡を発掘する(『古代への情熱』シュリーマン)数年前、シュリーマンは世界をめぐり日本にも立ち寄っています。本書は1865年に清の時代の中国と幕末の日本を訪れた時の旅行記です。 中国では気分を害することが多かったのか、物言いが厳しいです。そのへんを割り引いて読んでも、北京で塔の上から眺めた宮殿は、手入れが行き届かず朽ちるままになっていて、衰退の一途をたどっていた様子がうかがえます。 どうしても行きたかった万里の長城では、古代の遺物と岩山が連なる景色に感動し、ふたつで25キロの重さがある長城のレンガを背負って帰るのでした。 日本に対してはかなり好意的。清潔で小さな庭のある住まい、見事な細工物、清廉な役人などが好感度を上げたようです。 物の値段や寸法を細かく記録するきっちりしたところとか、望むことを実現する行動力とか、シュリーマンの性格が出てるなあなんて思いました。 多少の誤解や思いこみもあるんですけど、この人は物事を相対的に見るよう意識してます。所変われば品変わるで、どこか一点を基準に判断しないようにしてるみたいです。 あとは外国人の立ち入りが制限されていた江戸に、普通の旅行者がよく入れたなと。外国人が襲撃されるような物騒なご時勢で、滞在したアメリカの公使館も凄い警備なんですよね。 国内から見た幕末って、坂…

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『どぶどろ』半村良

どぶどろ (扶桑社文庫―昭和ミステリ秘宝)半村 良扶桑社 2001-12by G-Tools 表題作「どぶどろ」の主人公である平吉の心中を察すると、非常にやるせないです。ラスト近くで平吉がある人に向かって叫ぶ言葉は、平吉の言葉というよりも、ニヒリズムを打ち砕く、神の言葉であるように感じました。 あまり内容を詳しく紹介しないほうがいいかなと思い、いきなり感想を書いてみました。江戸の庶民の暮らしと、その喜び悲しみが胸に沁みます。 人から借りた本なんですけど、「ミステリーぽい時代小説。岡っ引きみたいな人が出てくるよ」と説明されました。 で、本の中で担ぎ売りのところてん屋だとか、夜鷹蕎麦が出てきます。 もうね、私の脳内では、その全てが同一人物の変装した岡っ引きという妄想が展開されてしょうがなかったです。ぜんぜん違うだろう。トンデモ時代劇なのか。多羅尾伴内なのか。

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『大奥 第四巻』よしながふみ

大奥 第4巻 (4) (ジェッツコミックス)よしなが ふみ白泉社 2008-12-24by G-Tools 波乱万丈の家光の話が終り、なんだか寂しい家綱の生涯を経て、綱吉の時代に突入しました。 いやー、なんだろう、このわくわく感は。誑しでアンニュイでこの先いろいろやってくれそうな綱吉さまに心もはずみます。周りの人間もクセがありますしね。父親の玉栄、柳沢吉保、右衛門佐。 あと、大奥の話と平行して、農村の様子も継続して描かれていますよね。二巻で登場した本百姓の神原家の子供たちも大人になり、家を守るために懸命に生きています。 文字の記録からはうかがい知れない歴史の裏側を妄想するのに、やっぱり庶民の話も欠かせないです。

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『大奥 第三巻』よしながふみ

大奥 第3巻 (3) (ジェッツコミックス)よしなが ふみ白泉社 2007-12-20by G-Tools もう発売してるんだ…! 風味絶佳な日々―読書日記―さんの記事を読んで、早速本屋に走りました。 三巻も面白い。失速しませんね。 家光と有功(お万)の間には子ができず、春日局は家光に世継ぎを産ませるべく、家光の閨から有功を遠ざけ、別な男を送りこみます。家光と有功のふたりは苦悩しながらも、それぞれの分野で政治力を発揮していきます。 赤面疱瘡によって、ついに体制側の制度も変化を余儀なくされます。史実の流れに、漫画のSF的な設定と、登場人物の個々の感情をうまく縒り合わせてあって、こうなることが必然であったかのようです。ラストは第一巻の吉宗の姿に重なるようで、ぞくぞくしました。そういや第一巻「お万好み」の風流な趣味もここから始まっているのだなあ。 このあと吉宗のところに話は戻るのでしょうか。お玉も気になりますし、有功のもだえる姿をもう少し見たいような気もするのですが。

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『大奥 第二巻』よしながふみ

大奥 (第2巻) (JETS COMICS (4302))よしなが ふみ白泉社 2006-11-29by G-Tools こ、濃い話だな~。 一巻の吉宗から遡って、二巻は三代将軍家光の時代。疫病のため男子の人口がどんどん減って、男女の役割が逆転しようとしているさなかです。 庶民は働き手を失って、必要にかられて役割が変化していったようなんですが、幕府での役割の移行の歪みっぷりがまあすごい。家光公の血筋を残さんとする春日局の妄念が大奥を覆うのです。 その妄念の生贄になった男女が、名を剥ぎ取られ性を抑圧され、これでもかこれでもかと襲う、悲しい運命に翻弄された果てに結びつく様子にびっくりですよ。この関係を成立させるためには、これしかないっちゅーぐらいの勢いです。 残酷な場面や男色が苦手な方は注意な漫画かも。でもこの異様さがあって、最後のカタルシスが得られるので、読んで損はないと思います。

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