『オルメードの騎士』ロペ・デ・ベガ

オルメードの騎士 (岩波文庫)作者: ロペ・デ ベガ出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2007/08メディア: 文庫 スペインの劇詩人ロペ・デ・ベガ(1562~1635)による戯曲です。 オルメードの騎士ドン・アロンソは、メディーナの町で美しい娘ドニャ・イネースを見初め、魔女ファビアに恋の取り持ちを頼みます。二人の気持ちは通じあいますが、イネースに恋する騎士ドン・ロドリーゴはアロンソに嫉妬し殺意を抱くのでありました。 ロペ・デ・ベガはシェイクスピア(1564~1616)と同時代に生きた人なんですね。スペインとイギリスで国は違えど、様々な階級の人が集まって一つの舞台を楽しむ演劇が盛り上がっていた頃なのでしょうか。 『オルメードの騎士』は話の筋は単純ながら、恋の情熱やアロンソの従僕テーリョの道化ぶり、そして悲劇の予感に、観客が喝采したりやきもきしたんだろうなあなんて思います。 ほぼ詩劇である原文のリズムを生かした翻訳で、読んでいるとリズムに乗ってくるのです。例えばアロンソがイネースを見初めた時のことを語る長い詩は、リボンで結い上げた巻き毛、胸元の襟にやった手首の白さ、フランス風の派手なスカートに重ねた地味な青緑のスカート、はきものの結びひも…と彼の視線の動きが感じられて、ニヤニヤしてしまいました。

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テネシー・ウィリアムズを二冊

ガラスの動物園 (新潮文庫)小田島 雄志 新潮社 2000by G-Tools 戯曲に興味がわいて、有名どころを二冊読んでみました。 『ガラスの動物園』 母アマンダ、足が悪く内気な姉ローラ、夢と現実の間で苦悩し、やがて家を出る語り手のトム。家族への想いと孤独がやるせないです。 『欲望という名の電車』 没落し若さを失って妹のアパートに身を寄せたブランチが、華やかな過去の夢と、野卑でたくましい妹の夫たちとの生活の間でしだいに神経を病んでいきます。 どちらも200ページ前後で、短距離走みたいに前のめりになって没入できました。 女性たちがとても繊細です。ローラは内気すぎてまどろっこしいし、アマンダやブランチには少し落ち着けと思うしで、彼女たちに共感できるわけではないんだけれど、特にブランチを見ていると、痛ましさに胸がかき乱されます。 会話とト書きによって限られた空間がぐっと立ち上がり、小説とはまた少し違う吸引力とか瞬発力を秘めているもんだなあ、なんて感じました。 欲望という名の電車 (新潮文庫)

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『夜の来訪者』プリーストリー

夜の来訪者 (岩波文庫 赤 294-1)安藤 貞雄 岩波書店 2007-02by G-Tools 戯曲です。 1912年、イギリスの裕福な工場主であるバーリング家では、娘の婚約を祝う宴が開かれていました。そこへ警部を名乗る男が現れて、ある若い女性が自殺して今夜亡くなったことを告げるのですが…という話。 スタンリイ・エリンあたりの、上質な短編を読んでいるようでした。 若い娘の死に関わる人間模様を暴いてくのにはドキドキ感があり、警部とバーリング家の人々の会話によって、感情や欺瞞、その人間性があらわになっていくところは秀逸です。真実がどこにあろうとも、その時に生じた感情は隠しようもなく、あとでうわべを糊塗する場面は、醜さと滑稽さの両方がでています。 戯曲には今までなじみがなかったけれど、面白いですね。他にも読んでみようかな。

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