『流れ行く者』上橋菜穂子

流れ行く者―守り人短編集 (偕成社ワンダーランド 36) (偕成社ワンダーランド 36)二木真希子 偕成社 2008-04-15by G-Tools 守り人シリーズの番外編。バルサ13歳、タンダが11歳のころのエピソードを綴った短編集です。 あたたかい家族に囲まれたタンダの里での生活。トロガイ師のもとに身を寄せたり、追手を逃れて用心棒稼業をしながら流れていくジグロとバルサの過酷な暮らし。 本編ではすでに大人になっている二人の子供時代が、丹念な世界描写のなかに息づいていました。 タンダなんかほんとうにお子様なんですが、思いやりと探究心があって、あのタンダにちゃんと繋がっていますね。 そしてバルサの現在の姿を形成するのに、避けては通れない出来事も容赦なく描かれます。 カバーもそうだけど中身も燻し銀の魅力です。ジグロとバルサのほかにも、「浮き籾」に登場する、里を離れて好き勝手に生きたオンザ、「ラフラ <賭事師>」のラフラの老女アズノ、「流れ行く者」で氏族から外れ隊商の護衛士をしている初老のカンバル人スマルといった、浮き草の人生の末がそれぞれに描かれていているのが良かったりします。

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『天と地の守り人 第三部』上橋菜穂子

天と地の守り人 第3部 (3) (偕成社ワンダーランド 34)二木 真希子 偕成社 2007-02by G-Tools 終わりましたー。 タルシュ帝国の侵攻、ナユグの異変によるサグの天災で、新ヨゴ皇国の国土も民もタンダたち兵も、そしてロタとカンバルの混成軍を率いて祖国に戻ったチャグムも、みんな傷だらけです。 本編はこれで幕となるので、登場人物にはなにがしかの結果がもたらされます。嬉しいことばかりではなく、苦さや悲しみもセットで。 このシリーズ、ファンタジーではありますが、国や個人の思惑が絡まりあって生まれる激流の中をひたむきに生きる、そんな人々が奇を衒うことなく描かれています。なので少し地味にも思えますが、逆に古びない物語であるとも言えますかね。 読んだ方はわかるでしょうが、チャグムをはじめ男たちがよく泣きますよねー。でもそれは自分が可哀相な涙ではなく、想像力があるから流れる涙なんですよね。

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『天と地の守り人 第二部』上橋菜穂子

天と地の守り人 第2部 (2) (偕成社ワンダーランド 33)二木 真希子 偕成社 2007-01by G-Tools なんの後ろ盾もないチャグムはロタとの同盟を結ぶことが出来ず、カンバルへと向かいます。彼を追ってきたバルサと合流し、タルシュの脅威から北の大陸を守るためにロタとカンバルの同盟を実現しようと駆け回ります。が、ふたりの前にはタルシュの刺客やタルシュに内通するカンバルの人間が立ちはだかります。 新ヨゴ皇国の帝は天ノ神の子であるという思想があって、チャグムの模索する方法とは相容れない部分があります。チャグムが国を出てここまで来るのに様々な経験を積んで成長してきたわけですが、また様々なものも失ってきました。そうやって自分なりの道を歩んだ先には、父との対峙が避けられないものとなって待ち受けているのが切ないです。なんだかんだ言っても、そこがこの巻のチャグムにとって一番苦しいところですもんね。

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『天と地の守り人 第一部』上橋菜穂子

天と地の守り人〈第1部〉 (偕成社ワンダーランド)上橋 菜穂子偕成社 2006-11by G-Tools 守り人シリーズ最終章三部作の一冊。 行方も生死も不明なチャグムを捜しに、バルサはロタ王国へと向かいます。 前作までの話では、チャグムはロタ王国やカンバル王国と同盟してタルシュ帝国に対抗するという希望を抱いて旅立ちました。 この第一部では、新ヨゴ皇国はチャグム皇太子逝去と第二皇子トゥグムの立太子を発表。タルシュ帝国の侵攻に対しては鎖国という道をとり、備えとして砦を築き、民を草兵としてかき集め最前線に送りこみます。兵の中にはタンダの姿もありました。 バルサは幼い頃から修羅の人生を歩んできて、寄る辺のない子供たちが危難にあうのを見過ごせない性分なんですよね。『神の守り人』でチキサとアスラを助けたのもそうです。チャグムはもう成人だけれど、彼の足跡を追ううちに、どうしても放っておけなくなったバルサの気持ちはわかる気がします。 彼らの行き着いた道の先には何があるのか、物語にどういう決着をつけるのか、はやく続きが読みたいですー。

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守り人シリーズ、アニメ化

上橋菜穂子さんのファンタジー、『精霊の守り人』がアニメ化決定だそうです。 放送形態は未発表なので私が観られるかどうかはわかりませんけど。 オフィシャルサイトを覗いてみたら、パイロット映像なんかもありました。 えーと、バルサが若い感じです。 私の要望としてはバルサを超人にはしないでほしい。 何メートルも跳躍したりとかね。 FANサイトさんで、上橋さんのコメントが読めます。 先方のサイトさんのルールを守ってご覧下さい。 ■追記:NHKでの放送が決まったようですね。2007年の春に放送開始予定で全26話です。

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『蒼路の旅人』上橋菜穂子

蒼路の旅人 (偕成社ワンダーランド (31))佐竹 美保 偕成社 2005-04-23by G-Tools タルシュ帝国の侵攻に苦戦するサンガル王国から、新ヨゴ皇国に援軍を求める親書が届く。評定の席で己の感情をおさえられず父帝の逆鱗にふれた皇太子チャグムは、罠であると知りながらも母方の祖父で海軍大提督であるトーサとともに船出する。 やがて囚われの身となったチャグムは、故国が滅亡の危機にあることを目の当たりにして、自ら苦難の道に飛び込んでゆく。 同じチャグムが主人公の『虚空の旅人』は守り人シリーズの外伝という位置付けでしたが、これは守り人から枝分かれした新たな物語の始まりですね。 15歳になったチャグムは成人の儀も終え、宮廷の若い層から人望を集めるようになります。しかし父帝との溝は深まるばかり。 新ヨゴ皇国のある北の大陸から、ヤルターシ海を挟んで南の大陸には、周辺国を枝国として征服したタルシュ帝国が存在します。圧倒的な軍事力で北の大陸を飲み込もうとするタルシュに対して、チャグムは己の無力感と民の希望に揺れながらも手探りで歩きだします。大人から見れば未熟で無謀とも思える道を選んだ彼ですが、その心の動きは読み手の心をゆさぶります。 挿絵のなかでも帆船の姿が美しい。海を漂うイメージがチャグムらの心象風景にも重なって、とてもいい効果を上げていると思いました。 加えてどんな場所でも、どんな境遇でも、したたかに生きている多様な登場人物たちが魅力にあふれていて、別な外伝も書けてしまいそ…

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