少しずつ読むディーネセンの物語

本によってはイサク・ディーネセン、カーレン・ブリクセンなどいろいろ名義がありますが同一人物です。念のため。 『アフリカの日々』は良い作品ですが個人的にはあまりピンときませんでした。しかし書名に惹かれて手に取った『運命綺譚』にやられました。続けて読んだ『バベットの晩餐会』で決定的になりました。 聖書や神話がさりげなく配され、現実からはすこし浮遊した、おとぎ話のような雰囲気を漂わせる物語。けれど文章はとても理知的です。高まる緊張のなかにもユーモアがあります。そんなところが私の肌に合います。 芸術は人々を至福の時に導くだけでなく、人の奥底に眠る官能を呼び覚まします。 例えば禁欲的な信仰を持つ人にとってそれは危険なことだったりします。己の中にある何ものかに冷やりとさせられたり、規範を取り払われたりするのが真の芸術と言えるのかも。 真の芸術家の孤独な魂を描く物語でもあります。 もったいないので未読のものは少しずつ読もうかと思っています。しかし絶版が多いのよね…。 原書では『運命綺譚』に「バベットの晩餐会」も収録されているそうです。 あと『運命綺譚』と対になる『Last Tales』を翻訳して出してもらえませんか。 翻訳本の収録作品をメモ。 『運命綺譚』 「水くぐる人」「あらし」「不滅の物語」「指輪」 『バベットの晩餐会』 「バベットの晩餐会」「エーレンガート」 運命綺譚 (ちくま文庫)作者: カーレン ブリクセン出版社/メーカー: 筑摩書房発売…

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『富士日記』武田百合子

先日読んだエッセイ『ことばの食卓』が予想外によかったのです。これは他の本も読まねばなるまいというわけで、ただ今、武田百合子祭りの真っ最中です。 内容は富士の山荘で過ごした日々の日記です。 車をとばし、買出しをして、ご飯を作って、庭をいじり、夫の武田泰淳の口述筆記をし、地元の人と交流する。そんな毎日が、その日買ったもの食べたものと一緒に淡々と綴られています。 武田百合子はどこか奔放で、思ったことを取り繕わずに書くのです。書かれた人は「わあっ」と叫んでしまうかもしれないけれど、悪口でないことはわかるし、私にとってはそこがまた魅力的です。 ものの見方や感じ方が独特で、日常の場面の切り取り方に身悶えします。例えばこんな。  河口湖の町の通りは、何故だかしいんとして、留袖を着た中年の女が一人、姿勢正しく大きな外股で歩いて行く。背が高く厚みのある体だ。金色のハンドバッグを持っている。白粉をつけない赤銅色の顔。黒い留袖から出て、ハンドバッグを掴んでいる手も赤銅色である。今朝、野良に出て一働きした人が、留袖を着て出かけてゆくのである。(中略)陽がさんさんとふりかかる中を、胸を反らせて歩いて行く。民族衣裳で盛装したアラビヤの女のように立派だ。 要は農家のおばさんが留袖を着て歩いているだけです。文章のうまい下手を通り越して、その人の肖像が、がつんと浮かんできます。同じように、スタンドのおじさんが自作の俳句を語る場面、人から聞いた話だけれど、グリーンのワンピースを着た白髪の西…

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『郊外へ』堀江敏幸

郊外へ (白水Uブックス―エッセイの小径)堀江 敏幸 白水社 2000-07by G-Tools ああー、こういう「まち」というかエリアの匂いのする本は好きです。 エッセイのようでもあるし、「私」が語る小説のようでもある文章から、パリ郊外の佇まいがじわじわ滲み出てきます。 散策して眺めた風景、出会った人、文学や写真集の中の郊外。城壁の外の景色は、移民と失業者があふれるコンクリートの建物郡だったり、ひなびた雰囲気を醸し出す古くて簡素な一戸建てが、高速道路の高架下に不意に現れたりというもので、歩く速度で視線が動いていくのもいい感じです。 私は、私が世界をどのように見たか、を報告したい 本のなかの引用からの引用、つまり孫引きの言葉なんだけれど、「私」の立ち位置をよく表していると思います。 関係ないけど、「私」の見聞と思索から立ちのぼる異国の郊外は、さらに私の頭の中で私だけが見える景色に変容しているのだろうなあ、なんてわけのわからんことをちょっと考えました。

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『旅をする木』『気になる部分』

『旅をする木』星野道夫 アラスカの荒々しい風景やそこで暮らす人々、自身の人生に深く影響を与えた人との出会いなどをつづったエッセイです。 これがすごくよかった。 大そうな主張なんてこれっぽっちもなく、「癒される」なんて言葉はぜんぜん似合わない本です。あくまでも静かな語り口。その静かな語りに耳を澄ますように、自然の営みの音や自分をとりまく宇宙の気配に耳を澄ませてみたくなります。 『気になる部分』岸本佐知子 ひとつの言葉、あるいは物事が気になりだすと、あとは連想ゲームのように妄想が炸裂するんですね。この岸本さんて人は。私も「時々思考が飛躍する」と友人に言われるのだけれど、本人にしてみると飛躍ではないのです。脳内のある文脈とある文脈の間に突如として回路が繋がるのです。あ、でも世間ではそれを論理の飛躍というのか…。 「翻訳家の生活と意見」で取り上げている本は非常に面白そうです。 φ(..)メモメモ。

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『多肉植物―ユニークな形と色を楽しむ』

多肉植物―ユニークな形と色を楽しむ (NHK趣味の園芸ガーデニング21)日本放送出版協会 2001-11by G-Tools 寒くなってきたので、多肉をいじる楽しみは春までおあずけです。暖かくなったらまた多肉を増やしたいなー、というわけで写真集や図鑑を眺める今日この頃です。 先日読んだ『多肉植物写真集』は、なじみのあるものから珍しいものまで、様々な写真が中心の本でした。 こちらの本は手に入りやすい多肉を中心に、基本的な性質、育て方、植え替えの仕方や弱ったときの対処方法がわかりやすく書かれています。 ハオルチアやアロエは根を乾かさずに植えつけるなんて知りませんでした。私はみんな同じように植え替えや株分けをしていましたよ。乱暴者ですみません…。 なので初心者にとっては親切な本といえましょう。 あとは寄せ植えの写真が素敵。複数の方のそれぞれ特徴のあるデザインが面白いです。同じような多肉を使っていても違いますね。やってみたいなこれは。 おまけで我が家の多肉の写真をupしてみます。

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『多肉植物写真集』国際多肉植物協会

多肉植物写真集国際多肉植物協会 河出書房新社 2004-03-12by G-Tools 本の中には、めくるめくニクの世界が広がっていました。 植物が好きです。最近は多肉植物に関心があります。で、花屋やホームセンターをぶらぶら見て気に入ったのを買うのですけど、名前が書かれていないのも結構あるんですよね。多肉は種類も多いし、似ているものの区別もつきにくいので、ちゃんと表示してほしいなー。 これは写真集なので詳しい栽培方法は載っていませんが、分類や名前を知るには十分。なにより見ていて楽しいです。メセンって脳みそみたいですね。そら豆っぽいのはかわいいかも。むらむらと収集欲がわいてきます。 国際多肉植物協会さんのサイトによると、2007年発行予定で第2巻も制作するそうな。 我が家のニクたちの写真をいくつかupしてみました。 ポピュラーな多肉しかないのですけど…。

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