『古書の聖地』ポール・コリンズ

古書の聖地 (シリーズ愛書・探書・蔵書)Paul Collins 中尾 真理 晶文社 2005-02by G-Tools エッセイといいますかノンフィクションといいますか、著者の「愛書家の聖地」滞在記です。 英国ウェールズの住民1500人の田舎町ヘイ・オン・ワイは、古本屋が40軒もあり、世界中からマニアが集まる古本の町である。 古書と奇書をこよなく愛するアメリカの若き作家志望者ポール・コリンズは、旅行者として滞在するだけでは飽き足らず、妻と一歳半の息子とともに移住しようとサンフランシスコの自宅を売り払いウェールズへ旅立つ。 古い建物と古い本に囲まれた暮らしを夢見てやってきた彼らだったが、住む家は見つからず、売れない古書の末路を目撃し、夢破れてアメリカに帰国するのだった。 こう書くと哀れなんですけど、それだけでは終わらずに、ポール・コリンズが最初の本を出す過程も共に描かれていて、全体は微笑ましい雰囲気に包まれています。 本の町の王様、リチャード・ブースのもとで働きながら、アメリカ人から見たイギリスの暮らしを皮肉とユーモアを交えながら描き、また沢山の本から引用しながら「本」というものを考察していきます。 「本を表紙で判断する」とか「誰も読まないカスみたいな本について」なんて、この目次のタイトルがすでに笑えませんか? 中でも、書き上げた原稿の本のタイトルが全部ボツになり、イライラする場面が面白かったので引用。 ぼくはもうすでに、いいタイトルをつけていたのだ。 もともとぼ…

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『本棚探偵の冒険』喜国雅彦

本棚探偵の冒険 (双葉文庫)喜国 雅彦双葉社 2005-01by G-Tools 漫画家で本の蒐集家でもある喜国雅彦のエッセイですが、初っ端から飛ばしますね。乱歩邸での撮影大会など「好きだー!」という気持ちがあふれていて笑います。 で、やはり見どころは本の寸法に合わせて作った本棚でしょう。こちらの「喜国雅彦スペシャルインタビュー」で写真もみられます。 私も本を横向きに積んでおく事ができない一人として、この本棚、そして美しく並べられた本をみた瞬間、感涙にむせびました。 並べた本の上に横向きに突っ込むなんてだめだだめだ! (あ、いえ、人様の本棚はいいのですよ。あくまでも自分の本棚の話です。) 他に手作りの函や豆本なんかも楽しいですけど、たとえ三千ページになろうとも、京極夏彦『鉄鼠の檻』の豆本はファンとしては見てみたいですねえ。無理だとは思いますが。

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『第三閲覧室』紀田順一郎

第三閲覧室 (創元推理文庫)紀田 順一郎東京創元社 2003-07by G-Tools 学長人事を巡る対立が激化する誠和学園大学総合図書館。 東西の稀覯書一万冊が眠る第三閲覧室で、一人の女性の死体が発見された。 書庫燻蒸中の事故なのか、それとも事件なのか? 全ての鍵は幻の詩集「陽炎」に。 古風な趣のミステリです。 舞台が図書館で題材が古書、前半は大学講師の島村を中心に地味~に話が進みますが、謎解きのために関係者が一堂に会するあたりからは面白くなります。紙や古書にまつわる薀蓄合戦と人間関係の暴きあいでワイワイやるのが、変な感想ですけど楽しそうなんですよ。そして年寄りのほうが行動が過激です。 島村が主人公だと思うのですけど、謎を追うのは古書店「明朝堂」店主の岩下で、でも謎解きをするのは岩下というわけではないのが少し変わってますね。 古書マニアのサロンに集う愛書家の風体を、「サラリーマンとも自由業ともつかない、教員でも役人でもないような中年の男たち」と表現しているのが妙に可笑しい。

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