『儒林外史』呉敬梓

中国古典文学大系 (43) 儒林外史作者: 呉 敬梓出版社/メーカー: 平凡社発売日: 1968/10メディア: 単行本 科挙にふりまわされる人々を皮肉った章回小説です。 「儒」とは学ぶ者を指すそうな。具体的には、科挙に合格すれば高位高官の地位や富が得られるので、そのために学ぶ人を指します。 科挙の試験に必要なのは、経書の知識と八股文を作成する能力で、一般的な教養とは無縁なものです。厳しい競争と偏った学問で歪んだ人物がたくさん出てきます。事大主義の俗物、名士を気取って文無しになる者。でもお人よしの馬二先生なんかには「幸あれ」という気分にもなります。 回ごとに登場人物と話がつながっていく形式で、知識階級を点描してるのかと思いきや、いつのまにか何十年も時が流れ時代が変わっていきます。最終回には名士たちは姿を消し、書や音楽、詩をたしなむ庶民ばかりが描かれています。こういう時代の遠近感が印象に残りました。 知識階級、いわゆる読書人の類型が並べられた地味な話ではあるけれど、皮肉にふふっと笑ったり、同時に描き出される風景風俗庶民の姿に、当時の社会の様子が垣間見えたりします。 ちなみに借りてきた平凡社の古い全集の翻訳は読みやすかったです。

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ドラマになるのか蒼穹の昴

ただいま読書は停滞中。トルストイ『戦争と平和』を亀の歩みで読んでいます。ふりーめいそんに入るぴええるに苦笑。これが日本の昔話だと、きつねに騙されて気がついたらおかしな格好で原っぱに取り残されていた村人的展開になりますね。 ところで『蒼穹の昴』がドラマになるのを今ごろ知りました。 清朝末期を描く「蒼穹の昴」が登場!(NHKオンライン) 中国でも放映されるようです。 ↓中国のサイトなので字が読めませんが画像がいっぱい。 http://ent.sina.com.cn/f/v/cqzm/index.shtml 西太后は田中裕子。「阿信」てNHK朝ドラのおしんですね。おしんの威力は侮れません。 あっ、うちのテレビだとNHK総合でしか見られないです…。 蒼穹の昴〈上〉作者: 浅田 次郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 1996/04メディア: 単行本

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買った本、読んだ本

たまには買った本など書いてみます。 『百鬼夜行抄(17)』今市子 最初の「狐使いの跡継ぎ」は、話が素直だし燈子ちゃんも可愛くて○。蝸牛の話「付け馬」もよかった。 八代って、いまいちメジャーになれない幸薄い演歌歌手みたいに思えてしょうがないです。 『三国志』宮城谷昌光 いよいよ文庫化。第1巻、第2巻を購入。これは何巻まで出るのでしょうか。 三国志は昔々に吉川英治のを読んだきりです。 長いのは積読になる危険性が高いのよね。 『子午線を求めて』堀江敏幸 まだ売ってませんでした。10日発売だと勘違いしてました。15日でした。『三国志』と一緒に買おうと思って、文庫の新刊コーナーをぐるぐる回ってしまいました。単行本を読んでいないので楽しみです。 あとは読んだ本など。 『十三妹』武田泰淳 日本の中国武侠ものの走りです。『富士日記』で、妻の武田百合子がせっせと鉄道便にのせていた原稿がこれみたいですね。続編が書かれたなら、もっと面白くなっていたかも。語りのノリはいいです。 『銀の匙』中勘助 どこの図書館にもある『銀の匙』。現代かなづかいで字がデカくなっていたので読みました。 えらく感じやすい子供だったのね。思い込みの強いところや、子供同士の嫉妬などもするすると書かれていて、衒いがないのがいいです。 「私にとっては知らない人間は即ち嫌いな人間である。」 …ってのはどうよ、と思って笑ったけど。 『異能の画家伊…

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『酒国』莫言

酒国―特捜検事丁鈎児の冒険莫言岩波書店 1996-10by G-Tools 怪作です。 マジックリアリズム作品て、その世界を丸ごと受けとめて読めばいいのだろうなとは思います。ラテンアメリカのものは、キリスト教とインディオの土着の文化が融合していて、その体温や呼吸みたいなものが私にとってはいまひとつ体感しにくいところがあります。 で、地理でも文化でもぐっと距離が近い中国の話になると、感覚的にわかる部分も多くなるような気がします。 内容はちょっと複雑です。鉱山都市の酒国で街のお偉方が酒宴で嬰児の丸焼きを食べている、そんな情報を得た特捜検事の丁鈎児(ジャック)が潜入捜査する。この話がまずひとつ。 その『酒国』という小説を執筆中の作家・莫言と、実際に酒国に住むという文学青年との往復書簡があり、さらにその文学青年が莫言に読んで欲しいと送りつけてくる自作の奇妙な小説が登場します。その変な話に引きずられて、莫言先生が書く丁鈎児の運命も狂っていきます。 話は闇鍋状態でうまく説明できないのですが、土地も広いし歴史も長いし人も多い中国の、なんでもあり感が押し寄せてきます。 文学青年の押しの強いところには、えらくリアリティを感じてしまいます。 嬰児の丸焼き料理を講義するグロい場面があるかと思えば、ツバメの巣を採る一族の話のようなどこか素朴な美しさを湛えた場面もあったりして、非現実的な話でも、それもありだな、なんて気分になります。 以前に読んだ莫言の作品『白檀の刑』は、処刑の場面が残酷だけ…

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『最後の宦官 小徳張』張仲忱

小徳張は清朝末期に宮中で権勢を誇った宦官のひとりです。浅田次郎『蒼穹の昴』の春児のモデルと言っていいのかな。彼は貧しさから抜け出すために、鎌を握りしめて自ら浄身し宮中に上がります。宮中の劇団で役者をしていて慈禧太后(西太后)の目にとまり、瞬く間に昇進して富と権力を手中にします。 内容は小徳張から見た宮中の様子と、彼がいかにして出世したかという苦労話&自慢話です。なのですが、小徳張の孫にあたる著者が少年のころに聞いた祖父の昔話を数十年後に語る、という形式のためか不正確な部分も多く、訳者の脚注がてんこもり。岩井氏の苦労の跡がうかがえます。 でも宦官たちや慈禧太后の日常生活などは「ほー」と興味をひかれます。それこそ「お祖父ちゃんを囲んで昔話を聞く」ぐらいの気持ちで読むのがちょうどいいのかもしれません。 最後の宦官 小徳張

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『女帝 わが名は則天武后』山颯

女帝 わが名は則天武后吉田 良子 草思社 2006-06-21by G-Tools 唐の第三代皇帝高宗の皇后で、後に周王朝を立て女帝として君臨した則天武后の生涯を描いた物語です。 残忍な悪女という評価をされ、名実ともに皇帝であった事実を否定されてきた則天武后も、現在は武則天と呼ばれ中国史上唯一の女帝として認められているそうです。 物語は武照(則天武后の名前)の一人称で語られます。平民の少女が玉座に登りつめる過程、皇帝の座を望みながら、だれ一人として政治の重い責務を担おうとしない息子たち。また自身の内面や性を冷徹に見つめます。 で、あのー、この小説ですね、婦人雑誌の読者手記を読んでるような気分になるのですよ。カバーに「婦人公論」て書いてないか? と探しそうになりました。ごめんなさいごめんなさい。もちろん波瀾万丈度は格段に違いますです。 もう、なに言ってるんだ、私は。

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