十二国記と佐藤亜紀とモリミーと

流れに何の関連もないと思いつつ、読んだ作品と作家を無理やり並べてみました。雑感を簡単に書いておきます。 yom yom (ヨムヨム) 2009年 10月号 [雑誌]作者: 出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2009/09/26メディア: 雑誌 yomyomの12号はもちろん十二国記の新作が目的です。 事前に新潮社のサイトで告知があったので、『華胥の幽夢』収録の「帰山」を読んで気分を盛りあげました。 新作は柳国が舞台でタイトルは「落照の獄」 「帰山」で語られた柳国の状況を内側、つまり官吏の視点から描きます。司法がらみでタイムリーな話といえますかね。でもちゃんと「天」につながっていて、十二国記の世界観に組み込まれています。天綱に記された条理は絶対で、そのこと自体は是非もなく容認されていても、やはり人は悩むし揺れるのでありました。 今度はもう少し動きのある話が読みたいなー、と贅沢を言ってみます。というか本編はどうなるの? 激しく、速やかな死作者: 佐藤 亜紀出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2009/06メディア: 単行本 『激しく、速やかな死』佐藤亜紀 短編集です。 うー、これはヨーロッパの歴史と文化の知識がないとつらいです。サド侯爵ならメジャーだし、白檀の小箱の話のように、背景を知らなくても女の人の意地悪な言い回しを楽しめる話もあるんですけどね。 作者による解題がついてますけど、私の力不足ということで…。 これを隅まで理解できる人…

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『料理人』ハリー・クレッシング

料理人 (ハヤカワ文庫 NV 11)作者: ハリー・クレッシング出版社/メーカー: 早川書房発売日: 1972/02メディア: 文庫 田舎町に現れた謎の料理人が町の名士に雇われ、料理の腕と悪魔的な魅力で周囲を惹きつけていくのだが…というお話。 洗練されていて美味しくて、相手の体調まで思いやった料理にころっといくのは万国共通なんでしょうね。ストーリーでは不穏な空気が漂いはじめますが、そんなのはどうでもよくなりました。 だってこの人たち充実していて楽しそうだもの。 メニューを考え、テーブルセッティングも完璧に、作って食べて、もてなしもてなされて…。もう他の事なんか何も見えないの、365日ハレの日なの、みたいな人たちが幸せそうだもの。 こういう壊れ方なら私もしてみたい…っていうのはダメでしょうか。病んでますか。

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デュラスとサガンで小説三本立て

太平洋の防波堤/愛人 ラマン/悲しみよ こんにちは (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-4)作者: フランソワーズ・サガン出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2008/03/11メディア: ハードカバー 池澤夏樹個人編集による世界文学全集の一冊。 フランス人女性作家の三つの作品を続けて読んだわけですが、なんだか疲れました。 マルグリット・デュラスが全然進まなかったです。 『太平洋の防波堤』も『愛人 ラマン』もフランス領インドシナが舞台。入植した貧しいフランス人一家の娘の性と愛が語られています。読み進むのに時間がかかったからといって面白くないわけではないです。細部に、おっ? と思うところがたくさんありました。 少女を主体とした性愛のとらえ方、描き方は冷徹。 『太平洋の防波堤』で少女は男の欲望をきっかけに、他者から見られること、そうすることによって自分は世間に乗り出してゆくことになるのだと感じます。逡巡し、まさに自身の生身を世間に(その男に)さらけだそうとしたとき、男は蓄音機をあげるからドアを開けろと言うのです。物質(富)を介在させるのです。 『愛人』になると少女は男に心を動かさないようにします。他の女と同じように接することを男に要求するのです。 デュラスの少女時代の体験が小説のおおもとにあるみたいですけど、同じようで微妙に違いますね。 『太平洋~』に比べて『愛人』は簡潔で文章も流麗になります。でも省略してあって分りにくいエピソードを『太平洋~』から想像して補え…

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『RDG2 レッドデータガール はじめてのお化粧』荻原規子

RDG2 レッドデータガール はじめてのお化粧 (カドカワ銀のさじシリーズ)作者: 荻原 規子出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2009/05/29メディア: 単行本 『RDG レッドデータガール はじめてのお使い』の続編です。 私は児童書のタグをつけてますが、カドカワ銀のさじシリーズは「子どもから大人まで楽しめるファンタジー」というコンセプトのようです。 今回はおもいきり学園物。高校生になる泉水子は紀伊を出て東京の鳳城学園に入学します。学園には有能な学生がひしめいていて、相変わらずまごまごする泉水子であります。 学園の謎あり、山伏や陰陽師といった日本古来から続く存在あり、超人のようでいても普通の高校生が抱えるような心の揺れありで楽しかったです。 さくっと読めるわりに、背後の世界観に広がりがあります。 古来からある神秘的な力。それらをめぐる暗闘。山や木々が発する清浄な気みたいなものを、泉水子を通して感じること。 過去の存在に思いを馳せたり、身体感覚を呼び覚ますところが私は好きなんですよね。 続きが読みたいと思わせる荻原規子の力はたいしたもんです。 ここから脱線。 イザベラ・バードは伊勢神宮を訪れたとき、「からっぽでおそろしい」というような感想をもらしています。 大雑把にいえば、神道にはキリスト教や仏教のような教義は無いので、そう感じるのもわからないでもないです。からっぽだから政治の具になるというのも当たっていま…

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『ソラリス』スタニスワフ・レム

ソラリス (スタニスワフ・レム コレクション)作者: スタニスワフ レム出版社/メーカー: 国書刊行会発売日: 2004/09メディア: 単行本 惑星ソラリスの海から昔の恋人がやってくる…。 読む前にそんなイメージだけが私の頭に刷り込まれていた『ソラリス』。観たことないですけど、映画の宣伝か何かの影響だったのでしょうか。実際は恋愛モノという意識はないまま読了しました。いや、そういう要素はありますけども。 頭に浮かんだ断片だけつぶやいておこうかな。内容に触れるので続きは以下で。

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『シュリーマン旅行記 清国・日本』ハインリッヒ・シュリーマン

シュリーマン旅行記清国・日本 (講談社学術文庫 (1325))作者: H.シュリーマン出版社/メーカー: 講談社発売日: 1998/04メディア: 文庫 トロイア遺跡を発掘する(『古代への情熱』シュリーマン)数年前、シュリーマンは世界をめぐり日本にも立ち寄っています。本書は1865年に清の時代の中国と幕末の日本を訪れた時の旅行記です。 中国では気分を害することが多かったのか、物言いが厳しいです。そのへんを割り引いて読んでも、北京で塔の上から眺めた宮殿は、手入れが行き届かず朽ちるままになっていて、衰退の一途をたどっていた様子がうかがえます。 どうしても行きたかった万里の長城では、古代の遺物と岩山が連なる景色に感動し、ふたつで25キロの重さがある長城のレンガを背負って帰るのでした。 日本に対してはかなり好意的。清潔で小さな庭のある住まい、見事な細工物、清廉な役人などが好感度を上げたようです。 物の値段や寸法を細かく記録するきっちりしたところとか、望むことを実現する行動力とか、シュリーマンの性格が出てるなあなんて思いました。 多少の誤解や思いこみもあるんですけど、この人は物事を相対的に見るよう意識してます。所変われば品変わるで、どこか一点を基準に判断しないようにしてるみたいです。 あとは外国人の立ち入りが制限されていた江戸に、普通の旅行者がよく入れたなと。外国人が襲撃されるような物騒なご時勢で、滞在したアメリカの公使館も凄い警備なんですよね。 国内から見た幕末って、坂…

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『ガラスの仮面(44)』美内すずえ

ガラスの仮面 44 (花とゆめCOMICS)作者: 美内 すずえ出版社/メーカー: 白泉社発売日: 2009/08/26メディア: コミック 半年で続きが出るなんてこれは夢なのかしら(笑) マヤと真澄さまと紫織さんのもちょもちょした関係とか、亜弓さんが一皮むけそうな展開はあるんですけど、話はあんまり進まないですね。 絵も人物の反応も大げさな濃い~ところは健在で、細かいシーンに吹きまくりました。 雨の中でニコと笑う白目の亜弓お姉さまとか、真澄さまの身悶えとか、バッグの肩紐がブチと切れるとか。 後半の亜弓さんにいたっては、ドラマの赤いシリーズなのかと問い詰めたいです。 話が進まんなどと言いつつ、昭和の薫りがする細部を楽しんで読んでいたのでした。

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