『民衆の古代史』吉田一彦

4833105330民衆の古代史―『日本霊異記』に見るもう一つの古代 (シリーズ 古代は変貌する)
吉田 一彦
風媒社 2006-04

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学生の頃の歴史の授業では、奈良時代は律令国家で、人々は口分田を与えられ稲作を行い、祖・庸・調の税を納めていた、と教わりました。
大宝律令が施行されたのは事実だけれど、じゃ実際世の中にはどの程度法が浸透し実施されていたのか、庶民の生活の実態はどうだったのか、そのあたりを日本最古の仏教説話集である『日本霊異記』を読み解き探っていこう、という本です。

昔話のひとつじゃないの? ぐらいの認識だった『日本霊異記』を史料として読むのはなかなか新鮮です。庶民への仏教の浸透、漁民や商人の暮らし、女性たちの姿などを丹念に拾い、律令の制度とつきあわせて人々の生活する姿を描き出しています。
霊異記は薬師寺の僧であった景戒が各地の風聞をまとめたものだけれど、土地や寺の名前は近年出土した木簡などから、実在したという裏付けがとれているものも多いそうな。統治する側から見ていた歴史に、地べたに立った庶民の視点を与えるという試みは、私は好きですよ。


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