『幸田文 ちくま日本文学』

4480425055幸田文 [ちくま日本文学005] (ちくま日本文学 5)
幸田 文
筑摩書房 2007-11-20

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おうっ。収録作のひとつ「みそっかす」の眼差しの厳しさに打たれます。優れた姉と跡取りである弟の間に生まれたみそっかす。そういう寂しさと僻んだ心を引きずって、周りを眺めた少女時代の記憶が綴られています。おばあさんや生母の姉のオバ公さん、やがて来る父の後妻、そういった自身に連なる人々の像が強烈にたちあがります。そのなかで父と継母の不和がもたらす家庭内の緊張、家族の間の距離とそれぞれの孤独を書いたところなど、こちらが居たたまれなくなるぐらいです。真剣を振りかぶって斬り込むような向き合い方で、おうっ、うむう、と唸っちまいました。同時に自身の我の強さが人に与える影響や、大人になって思いやれる継母の気持ちにも触れていて、もの悲しさが漂います。

女の一代と喪服の一代を絡めて描く「黒い裾」も印象に残ります。
黒い色がぐいぐいと押してくる強さを、和服の持つ繊細さが包むような感触がある話でした。


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