『雨にもまけず粗茶一服』松村栄子

4838714491雨にもまけず粗茶一服
松村 栄子
マガジンハウス 2004-07-15

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おー、面白かったです。
主人公は東京にある武道茶道家元の跡継ぎ、友衛遊馬(あすま)十八歳。親の言うままに京都の大学に入り家を継ぐなんてやってられん、俺は自由に生きるんだ、とばかりに家を飛び出します。そのとき由緒ある茶杓を持ち出し、騒動の元になるのです。
遊馬はちょっとした理由があって京都が嫌いなんですけど、成り行きで京都で暮らすことになります。家を出たのも結構成り行きで、場当たりな目標しかなく、跡継ぎという立場から逃げたかったというのが真相です。
そういう風に逃げたのに、どうしてだかその身はお茶に縁のある場所へと流れついてしまうのです。ジタバタする遊馬の駄目っぷり、いやだいやだと思っても、からだには作法がしみ込んでしまっている様子がなんだかおバカさんで、「ふふふ」と笑いがもれてしまいました。

登場人物がなかなか素敵です。持ち寄り茶会を心から楽しむ妙ちくりんな茶人たちや、「お茶というのは人それぞれであり、自分にできるのは精一杯を弟子の前で尽くして見せることだけだ」と思うお茶の先生、志乃。不調法でお茶のことは詳しくわからない私に、その魅力や茶人ひとりひとりの心持ちの一端を垣間見せてくれました。
この他にもドラマがてんこもりで楽しい楽しい。

しかしこの遊馬、小説内でも言われてますけど、一文無しでさすらい、よく知らない家に居候してわりと平気で食事をご馳走になっている様子は、ツワモノといいますか鈍感といいますか、ある意味すごい人です。


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