2008年08月19日

『奇縁まんだら』瀬戸内寂聴

4532166586奇縁まんだら
横尾 忠則
日本経済新聞出版社 2008-04-16

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今までに出会った様々な人物の記憶を綴ったエッセイです。
川端康成に三島由紀夫に谷崎潤一郎。昔の文壇の大物たちがずらりと並んでいて、やたらと強い印象のある彼らの横顔に、興味が尽きない本でありました。

一人の人間の目で、ある人の全人格を見渡すことはできないし、そもそも人って、向きあう相手によって見せる表情も引き出される面も違うものでしょう。多くの偉人奇人たちを遠慮のない目で見つめることによって、瀬戸内寂聴という人間の様々な面が逆照射されています。思い切りがよくて、ちょっと図々しくて、変なところで素直で、きりっとした姿が頭に浮かびました。

この本の前に瀬戸内晴美時代の著書『有縁の人』も読んでみました。『奇縁まんだら』と内容がかぶっているところが多いのですが、平野謙の現実と小説を混同したとぼけた発言や、「せ、瀬戸内さん……」と思うような、遠藤周作との面白エピソードがあって、こちらもなかなか好いです。

有縁の人
タグ:エッセイ
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2008年08月11日

『RDG レッドデータガール はじめてのお使い』荻原規子

4048738496RDG レッドデータガール はじめてのお使い (カドカワ銀のさじシリーズ)
荻原 規子
角川グループパブリッシング 2008-07-04

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修験道を題材にした、現代が舞台のファンタジーです。

正直、中盤まではどうなることかと思いました。
熊野古道に接する玉倉神社に育った鈴原泉水子(すずはらいずみこ)は、長いお下げ髪にメガネをかけた、引っ込み思案な中学三年生。
この主人公の内気ぶりがはんぱじゃないです。怖い、できないと思ったら人任せの、あまりの幼稚さにイライラ必至です。仕事で不在の両親は、母親は警視庁公安部に勤め、コンピュータプログラマーの父は大手に引き抜かれてシリコンバレーで働き、父の友人・相楽はやたらと有能で男前、相楽の息子の深行(みゆき)は泉水子と同じ中三で、秀才でスポーツ万能でもちろん男前。
主人公の周囲にいる人間がみな超人で、違う意味でファンタジーな設定がちょっとキツイなあ、と思っていました。

でも後半、話がぐんぐん動き始めると、極端な設定も納得がいくし、昔の日本の信仰と現代がうまく絡み合っていて、物語のさらなる広がりが期待できました。
要するに面白かったんですよう。
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2008年08月09日

『本の本』斎藤美奈子

4480814876本の本―書評集1994-2007
斎藤 美奈子
筑摩書房 2008-03

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1994〜2007年までの斎藤美奈子の書評集です。
700ページ超。厚さ5センチ。短い書評の集積だし、わりとすぐ読めるかなと高を括っていたのですが、読んでも読んでも終わらない無間地獄状態でございました。いっぺんに読もうとせずに、気が向いた時にちょっとずつ読むのがおすすめ。

好きなところから読めるように、構成も単に年代順ではなく、小説と随筆の本、文芸評論と日本語の本、本のある生活、社会評論と歴史の本、文化と趣味の本のジャンル別になっていて、巻末に索引もついてます。

斎藤美奈子の書評は、ご自身が「ええっ!」と思ったことを鋭くつっこむのが芸になっていますよね。小説の項目を眺めると、私の読書傾向とはタイプが少し違うので、本選びの参考にはならないけれど、書いていることが純粋に面白くて好きです。
小説以外だと、動物学や生き物の図鑑を取り上げているのは嬉しい。
私の鉢植えの写真がおしゃれじゃないのは、植物をインテリアだとは思わずに、図鑑ちっくな視点で見ているからかも? なんてことをふと思いました。
うん、まあ、センスがないだけなんだろうけど。
タグ:批評
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2008年08月05日

『緑のヴェール』ジェフリー・フォード

4336050287緑のヴェール
貞奴 金原 瑞人 谷垣 暁美
国書刊行会 2008-06

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『白い果実』『記憶の書』ときて、いよいよ完結編です。
読み終えて思うに、これらの物語には、あんまり深い意味はなくて、クレイたちの冒険の一瞬一瞬を楽しめればいいのかも知れません。
そういえば前作に登場した美女アノタインは、過去と未来の間にある、今この瞬間、という時間の研究をしていました。

で、『緑のヴェール』はクレイと犬のウッドが〈彼の地〉を旅する物語と、ミスリックスというキャラが崩壊した理想形態市で過ごす物語のふたつが語られていきます。
雰囲気も軽やかなファンタジーという感じで、クレイが〈彼の地〉で出会う生き物や出来事も、ユーモアというより失笑もののバカバカしさと、強烈なイメージ喚起力があります。
もうね、植物動物? 植物人間? なのかよくわからないけれど、木の姿をした緑人とか、薔薇色で肉桂の香りがする山猫とか、字面で登場しただけで、何もない背景に鮮やかな色彩が広がっていくようです。話自体はどうなのよと思わないでもないけれど、読んでいる間はえらい楽しいのでありました。
タグ:翻訳 幻想
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2008年07月29日

『秘太刀馬の骨』藤沢周平

以前に重臣暗殺事件で使われたといわれる秘太刀「馬の骨」。
主人公の浅沼半十郎は、派閥の長である家老の命をうけ、家老の甥の石橋銀次郎とともに、「馬の骨」の使い手を探索する…という話です。

なんなの? この銀次郎って若造は。
銀次郎は神道無念流のなかなかの使い手らしく、「馬の骨」が伝わる不伝流の剣豪たちと手合わせをして、秘太刀の継承者をさがそうとします。不伝流の道場はガードが固く、他流試合も禁止しているので、銀次郎はひとりひとりの弱味を握って試合を強要するのです。態度が悪いしねちっこいしで、その不遜な物言いをする悪い口はこれか! と、唇をつねってやりたくなりました。
でも「なんなのこいつは」と読者に思わせるのも戦略なんですよねー。気がついたら結構楽しんでいました。

いっぽう銀次郎に振り回される半十郎は、家に帰っても妻が気鬱の病で心が休まらない気の毒な境遇です。

派閥の権力闘争を背景に、秘太刀の継承者は誰? という謎、半十郎夫妻をはじめとする人物たちの人生の哀歓が、後味よく描かれていました。

秘太刀馬の骨 (文春文庫)
タグ:時代・歴史
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2008年07月27日

流行りに乗ってみる

あちこちで見かけるgooのブログ通信簿、私もやってみました。
そこには衝撃の結果が。

ブログ通信簿


性別と年齢に注目してください。
そして5段階評価で主張度が4です。
むむむ、私は自己主張の激しい小学生男児ですか。そうですか。
これはブログ上での言葉遣いから導き出される結果なのでしょうか。もっと大人になれよ、という風に解釈して精進します。
通信欄の「文化祭実行委員」タイプってのも、祭りになると生き生きする子供みたいに思えてきます。自称、大人の女性としてはどうなんでしょうか。



話は変わって、読了メモにMediaMarkerを使っていますが、他に読書メーターにも登録してみました。
記録している内容は一緒です。
使ってみた感じでは、細かい読書管理にはMediaMarkerのほうが向いていますね。
読書メーターはMediaMarkerよりも、ソーシャルネット的な側面が少し強く、ユーザーの本の好みもエンタメが多いような印象を受けました。
あとサイトが重いときがあります。
どちらも手軽に使えるので、目的に合わせて選べばいいと思います。
タグ:ブログ
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2008年07月23日

『柳田国男の民俗学』福田アジオ

4642063390柳田国男の民俗学 (歴史文化セレクション)
福田 アジオ
吉川弘文館 2007-09

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昔の日本の暮らしや民間伝承には興味があります。といってもそれに関する本をつまみ食いするぐらいで、民俗学の知識があるわけではありません。そんな程度の私が読むのにちょうどいい本でした。

柳田国男の生い立ちや思想を押さえながら、柳田民俗学の主な研究内容を概観し、矛盾点を指摘します。その上で個別要素を掘り下げるだけではなく、それらを結合して社会史の全体像を組み立てられるような方法を築くことが今後の民俗学の課題であると述べています。

本に引用されている柳田の説は、ちょろっと読んでも面白いのです。で、うっかり丸呑みしそうになるんですが、『蝸牛考』の変なところはわかりやすいですね。受け取り方によっては、歴史や文化は中央でしか生まれないことになってしまいます。

「日本」という単位の地理的条件だけで見ると、私なんか辺境に住んでいることになるけれど、北は北、南は南で人や物が行き来する文化圏があったでしょう。地域の歴史を編むなら周辺国も視野に入れないと辛いわなあ、などと呟いてしまうでありました。
posted by nao at 13:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 本_2008年 | 更新情報をチェックする